怒り考

「出会った頃はこの人とは絶対解り合えないと思ってたけどね」

「俺も歳をとるのよ、いろんなことあるし成長するのよ」

「ふふふ」

いつも思い出す、夜のラストドライブ。

 

 

「よし決めた!今夜は寿司食うぞ!」

「えー!ぎりぎり入店やだなぁ」

俺のわがままで霧島SAのちゃんぽん代替案。

実際ホテル着いた時は食堂閉まってたけど。

 

 

博多駅ならなんでここ左折しないの?近いのに」

「いいの」

「じゃあいい、黙って座っとく」

百年橋通り、ハンドル握る姿。

 

 

「じゃあ今度会うのは年末の札幌やね」

「行けたら行くよ」

行けないって決めてたくせにね。

地下鉄博多駅の改札口。

 

 

警察からの電話、思い出してしまう。

「所有されてる車が発見されまして」

「はい」

「ご存じですか」

「はい」

「近くを通りかかった方が電話しに橋を離れた時に姿が見えなくなったようなのです」

「どういうことですか」

「現在捜索しておりますのでまた一報差し上げます」

「はい」

 

 

警察署に車を引き取りに行くのは過去に経験したことのない辛さ。

その足で現場まで行った。

一緒にドライブしてくれてたかなぁ。

大好きだった天井オープンにしたし。

宮崎道分岐辺りで夜の雨に降られたけど、オープンで全く平気って話をしたね。

「いやーやっぱりいい車!」

きみはぼくとぼくに関係するものの悪口を一切言わなかった。

 

 

 

一年過ぎたけど、怒りを見るの、やっぱしんどい。

 

 

 

88点。